アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

谷本真由美さんを読まずして海外就職は語れない。

海外就職は新しい働き方だ。だから情報を集める必要がある。 しっかりとした分析がない中で元国連職員の谷本真由美氏の本は論理と実体験が結びついた形で書かれている数少ない良書。 谷本氏の本のいいところは、あおることもせず現実を見据えた上での海外就…

ウソでもすごい。佐村河内守の自伝。

ゴーストライターがばれて週刊誌やテレビで炎上した、「作曲家」の佐村河内守氏だが、自伝『交響曲第一番』(幻冬舎文庫)は本当にすごかった。 何がすごいって、話のリアリティ。 難聴による耳鳴りの描写など一般人が知りえないところも説得力を増しており…

日本の家族のギスギス感が浮き彫りに

日本の家族を描いた映画としては、森田芳光監督の『家族ゲーム』が一押しである。 この作品は、伊丹十三が父親の家庭で、二人兄弟の弟が高校受験のために、家庭教師の松田優作を雇うところから話はスタートする。 この話は基本的には、現代日本が家族の中で…

移動は特権階級にとっては「投資」、貧困層にとっては「職探し」

プロブロガーのイケダハヤト氏が高知県に移住することを発表した。 http://www.ikedahayato.com/20140601/6301963.html 実際、意欲的な取り組みでもあり、関西の地味な県に住んでいる身にとっては、今後どうなるのか興味深い挑戦だ。 いい機会だから、今回は…

人間の底力、も信じていい〜日本論を読み直す⑥〜

私は基本的に能力のある人間が好きだ。性格のいい人間が好きだ。そりゃ基本的に誰でもそうだから、社会的に優れた能力のある人のところにいい話がくるのは仕方がない。古いと呼ばれるかもしれないが、基本的に日本の偏差値というのは人間を選別することを「…

たかが夢、されど夢〜日本論を読み直す⑤〜

さて、今回の連載も残すところ残り1回になった。 この連載のお読みの方々は、海外就職をしたかったり、現にしていたりする人たちだろうから、当然、海外で働くことを「夢」にしていることと思う。最後にふさわしく、「夢」について書かれた本で締めるとしよ…

ジャーナリズムの頂点はやはり、ウォーターゲート事件

権力を言論機関が監視する。 もう世界中で死に絶えた 「前提」だが、言論の自由を最も追求したアメリカでは ジャーナリズムの歴史は、ニクソンのウォーターゲート事件を暴いたボブ・ウッドワードで凋落せざえるをえなかった。 アメリカのジャーナリズムで戦…

「そのままの自分」がはまるところを探せ!

日本の書店にはコミュニュケーション関連の書籍が氾濫している。 やれ「人に好かれる話し方」だ、やれ「常に笑ってろ」とか、はっきりいって病的なほどだ。 やはり以前紹介した『「縮み」志向の日本人』(講談社学術文庫)や『タテ社会の人間関係』(講談社…

新聞が奇人・変人大会になったワケ

新聞の特に人権問題で社会的弱者などの描き方がどうもおかしいと思った方は少なくないだろう。 奇人・変人を集めた「エンターテイメント化」しているのはうすうすみんなが感じているのではないか?あまり悲惨だとか苦しいだとか極端な事例を挙げすぎると「あ…

これがリアル知的サバイバルゲームだ!

節約は主婦のブーム、ではなくて、できるだけ安くいい生活をしたいのは万人の望み。 てなわけで、『年収100万円の豊かな節約生活術』(文春文庫)がおすすめ。 年収100万円の豊かな節約生活術 (文春文庫) 作者: 山崎寿人 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売…

あなたの個人資産は大丈夫?

日本がデフレになるのは構造的な問題がある、と『国家が個人資産を奪う日』(平凡社新書)は指摘する。 グローバル化が進み、製造業が移転するなど産業が空洞化する中で、製品のクオリティに合わせて値段が決められるのではなくて、ユニクロなどのファストフ…

ネットはもともとリア充に有利

ネットが普及したころ、万人に可能性が開かれた的な意見が目立った。だが、それは幻想に過ぎない。 ネットが普及して一番得をしているのは、リアルの世界で地位や実績がある人であり、一発逆転はほぼないのだ。 ネットニュース編集者の中川淳一郎氏の『ネッ…

重要なのはあなたの目

情報自体は腐るほどある現代では、どのような視点から情報を編集して発表するかということが重要になる。 これが『キュレーションの時代』(ちくま新書)に書かれていることだ。 ネットで過去に書いた記事が検索されてしまい一生残ってしまうという恐ろしい…

ドイツ人による世界認識

EU創設に大きく寄与したドイツの元首相 ヘルムート・シュミットによる世界秩序の認識が『大国の明日』だ。 基本的にはポイントをしっかりと抑えたいい本だと思うが、少し硬くて文章が読みにくい。 この本によると、日本についての認識はやはり東アジアとの外…

ラーメンはアメリカから生まれた

国民食となったラーメンだが、実は敗戦後の日本にアメリカが国内であまった小麦の市場になったという背景があったことを知っている人間はあまりいないだろう。 『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)は、アメリカとの関係、国内では田中角栄の日本列島改造計…

基本的に「欧米」は軍事力をもちたがる

『ネオコンの論理』と『アンチ・ネオコンの論理』の二つを読み比べて思うのだが、 アメリカは自国による世界秩序の安定しか想定できないということと、ヨーロッパも軍事力を影響力の拡大のために持ちたいということ。 日本で最近集団的自衛権がやかましいの…

三人称不在の国

先日に続き、森有正著『いかに生きるか』(講談社現代新書)を取り上げる。 「経験」については以前話したから、今回は日本語、日本社会の人間関係の基本となる概念について。 森氏によると、日本語では必ず相手との権力関係の中での具体的な二人称にしかな…

ヨーロッパのやりかた

先日取り上げた 『ネオコンの論理』(光文社)は軍事力というハードパワーの存在を軸に世界秩序におけるアメリカの重要性をのべ、唯一の超大国となったアメリカが他に頼らなくてもやっていけること世界秩序の認識として提起した。その中で核の傘に守られてき…

すべて一夜限りの恋人たち    

「すべて真夜中の恋人たち」(講談社、2011)は、水野くんという男性による女性への鬱屈した復讐譚である。 長野県出身の彼は高校時代、特に頭がよいわけでも容姿に優れているわけでもなく、家でレコードをひっそりと聴くのが楽しみの平凡な毎日を送り、…

「男の中の男」にはアレがない

フロイトいわく「男らしさ」は「男根の不在」によって完成するらしい。「真の男は女などに惑わされない」というわけだ。映画「ターミネーター」が、性欲がなく、冷静で淡々と完璧に任務を果たすアンドロイドを理想の父親として描くのもそのためだろう。兵器…

故郷の下の血と骨

普通、故郷という言葉は「暖かい」とかいった肯定的なイメージで通っている。そういう側面は確かに存在するけれど、その「暖かみ」が無知や無関心の上に成り立っているのではないのか、と中上健次著『紀州 木の国・根の国』(角川文庫、1980年)は問いか…

噛みつかれてナンボ

エライとは何だろう?地位が高いこと?社会に何らかの実績を残したこと?私から言わせればどちらも違う。噛みつかれることだ。それもまっとうな根拠を付けられた上で。 竹中労著『エライ人を斬る』(三一書房、1971年)は各界のエライ人に根こそぎ噛みつ…

屈折した反逆心

『日本の歴史をよみなおす(全)』(網野善彦著、筑摩書房)は、普通日本で教育を受ければ持つであろう「男性中心の自給自足の農業国家」という歴史観に対して根本的な疑問を叩きつけた挑戦的な本である。語り口こそ柔和であるが、マジョリティの「正しい」…

ポルノグラフィティとしての洪作 

『しろばんば』(井上靖著、新潮文庫)の舞台は戦前の静岡県のとある山村で、洪作という少年が主人公だ。彼は実の両親から離れ、曾祖父の妾であったおぬい婆さんと二人で祖父母が持つ土蔵に住んでいる。生まれた後、洪作がおぬい婆さんになついて彼女が住む…

風の吹くまま、人の死ぬまま

これは、「3・11を振り返って」という課題です。 人間の思考と生まれ育った風土とはどの程度関係があるのだろうか。北アフリカやイタリアの貧乏人が不思議と不幸せそうに見えないと聞いたことがあるが、地中海では「太陽が平等に照らす」(アルベール・カ…

親殺しの文学

『風の歌を聴け』(講談社、村上春樹著)は、喫茶店でかかっているムード音楽のような小説だ。なんとなく人の気を引くような、誰でも共感できる作りになっているが、店を出た後何かが残るかというと何も残らない。饒舌なくせに無内容な本なのである。 主人公…

グ~っとくる喜朗

この本は実在しません。 日本は腹時計が支配する非常にいい加減な国になった。これが話題の元首相森喜○著、『テロリズムの原点~時間破壊~』(主婦の友社、2025年)である。 舞台は近未来のサラリーマン国家日本。年間自殺者数が100万人を超え、うつ病患…

私の若かりしころの文章

私が某文章教室でやっていた課題作品を公開する。 とりあえず、いろんなジャンルにわたるので、見せてもまずくなさそうなものを あげます。

『これであなたも谷崎潤一郎!!!』(笑)

西田幾多郎著『論文の書き方』(岩波新書)は、文章作法の基本的な心構えなどが書かれた「文章読本」としては良くできた本である。「が」の使用範囲が広いため使い方に注意しようという技術的なことが書いてあるかと思えば、「文章とは観念の爆発である」な…

悟りと自明

宮田珠己著『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)は宮田氏が全国にある巨大仏を巡るルポルタージュであり、茨城県にある高さ120メートルの日本最大の「牛久大仏」からスタートし、大阪にある岡本太郎作「太陽の塔」など合計14カ所を訪れる。宮田氏…