谷本真由美さんを読まずして海外就職は語れない。
海外就職は新しい働き方だ。だから情報を集める必要がある。
しっかりとした分析がない中で元国連職員の谷本真由美氏の本は論理と実体験が結びついた形で書かれている数少ない良書。
谷本氏の本のいいところは、あおることもせず現実を見据えた上での海外就職を勧めているところ。また、日本を相対化した距離をとることで、視点が感情的になりすぎずに説得的なところもいい。
ただ、難点を言えば、やはり恵まれた経歴をお持ちなだけに、いわゆるフツーの人が海外就職をする参考にはあまりならないのではということ。谷本さんの本を理解できる人は日本でも十分通用する人だろうから、いわゆるノンエリートの人に合わせた本が出てくるとバランスがよくなるか。そういう人はそもそもリスクの高い海外就職などしない方がいいとも言えるから微妙なところだが。
まず、『キャリアポルノは人生のムダだ』。この本は日本の自己啓発本はアメリカと同じで「誰でもがんばればできる信仰」に基づいていると指摘する。アメリカのような超格差社会ではないのにもかかわらず、このような信仰がはびこる現状も書いている。
自身も自己啓発本をよく読んでいたが、弟さんの自己で「人生は思い通りにならない」という真理にめざめ、イタリアでの勤務から「人生を楽しんだり家族を大事にする」ことが大事だという価値観の転換が起きたと書いている。
実体験に基づいた話には説得力がある。
『日本に殺されずに生きる方法』と『日本が世界一「貧しい国」である件について』はより論理的にデータで日本社会の労働環境についてのおかしなところを指摘しており、海外就職をする人以外も必読。
ヘビメタバンドがお好きだということが関係あるのかどうか、語り口も過激なところは過激だし、マンガや小説、映画なども絡めてかかれてあるので読んでいて楽しい。