アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

小説J

小説⑨〜恐怖の新人研修〜「俺って大阪から派遣されてるの?????」

入社から1カ月ほど経った後、新人研修を受けることになった。経験者だった私は何を今更と思ったが、これがカイシャだから仕方ない。 狭い会議室に呼ばれたのは、私、O君、Dさんの3人。私以外の3人は大学院を出ていて、Dさんはインドネシアの大学で修士号…

小説⑧〜長い夜〜やはり日本人は日本人だった

KやYに2人を加え、会社近くの居酒屋に繰り出した。 K「あの野郎。ぶっ殺してやる。」 いきなりKの語気は荒い。 Kは創業者がまだ生きているころ、直々に採用された最後の一人だ。私立の最難関大学の最上位学部を卒業後、Jに入社した。本人は学生時代からパン…

小説⑦〜初めての会議〜罵り合いは突然に

私とTはオフィスに戻り、仕事にかかった。しばらく仕事をした後、午後7時に業務報告会が始まった。 開口一番、業務主任で細身で2メートル近い長身のK君がこういった。 K「あのー、新しく入った人の紹介を昨日いきなり受けたんですけど。何で事前に紹介して…

小説⑥〜ゾンビ会社への入口〜ポリシーなき上司

勤務初日。私はインドネシアをよく知る転職エージェントのすすめに従い、スーツで出社することにした。そのエージェントによると、インドネシア人は特に見かけで判断することが多く、きっちりした印象を与えるスーツ姿が初対面では効果的だとのこと。お土産…

小説⑤~「俺、実は辞めるんです」、到着初日に告白される~

日本で言えば、銀座にあたるだろうか。オフィスから程近い繁華街の裏にあるコスに着いた。オランダ風といえばいいだろうか。モルタル製で部屋は30室ほどある7階建ての建物だった。 まず、大家のイブ(インドネシア語で年上の女性に対する敬称)に挨拶。そ…

小説④~漆黒の女、H~同僚と顔合わせ

車はジャカルタの目抜き通りを走り、オフィスの入っている高層ビルに着いた。車の中に爆発物などがないか、ゲートで警備員がチェックする。チェックが済み、私はT部長とともにオフィスに入った。 オフィスでは納期の直前だったこともあり、従業員、つまり同…

小説③~「男性器」を通って・ジャカルタ到着~

小説③ 〜ジャカルタ到着〜 一人で飛行機に乗る事に慣れていない私にとって、道中は胸が高まった。「どんなところなんだろう」、「インドネシア語を覚えよう」など期待に胸が膨らんだ。 私の思いをよそに、飛行機は淡々と航路を進み、目的のスカルノ・ハッタ…

小説② 〜「南方になんて行くのか!お前!」と父に罵られ〜

私はJ社に内定をもらい、両親に報告した。それを聞いた父は開口一番、「お前!南方なんていくのか?ジャカルタ?危ないぞ!」とやめるよう諭された。私はインドネシアには基本的には銃は出回っておらず、それなりに安全だと思っていたこともあり、それを説明…

小説① 発端〜地獄の幕開け〜

その日、私は池袋にあるビッグカメラの前で待ち合わせをしていた。インドネシアの自動車部品メーカーJのTという部長と面接をするためだ。 1時間ほど前から待っていた私はTを難なく発見できた。日本人の中年男性にありがちな、「オジさん」的なカタい雰囲気…