小説① 発端〜地獄の幕開け〜
その日、私は池袋にあるビッグカメラの前で待ち合わせをしていた。インドネシアの自動車部品メーカーJのTという部長と面接をするためだ。
1時間ほど前から待っていた私はTを難なく発見できた。日本人の中年男性にありがちな、「オジさん」的なカタい雰囲気がなく、どこかだらしなさとスキがただよう風貌が他と違っていたからである。
T「こんにちは。じゃ、早速喫茶店入ろうか?今日は君以外にも3人面接してて、今終わったばかりなんだ」
こう言われ、私はTに誘われるまま近くの喫茶店に入った。注文が終わるとTはこう切り出した。
T「今どういうとこ受けてるの?うちはどうやって見つけた?」
私は日本社会の閉塞感に嫌気がさし、話題になっていたアジア就職をしようとインターネットで探していたところ、J社がヒット。応募したのだった。
T「まあー、今の日本はもうシステムが完成されちゃってるからね。もう不安定な中でどう生きていくかってことを考えるべきだよね〜」
こういうやり取りを経て、これまでの私の実績、仕事に対する考え方などを話したところ意気投合。3時間話し合った後、その場でTから「うちにきてくれ」と内定をもらった。
インドネシアを含め他のメーカーも受験し、内定をもらえていないだけに素直に嬉しかったことを覚えている。今から思えば、この面接が地獄の幕開けとなったことも知らないで。。。。