推理小説の醍醐味は?トリック?いや、論理のアクロバットこそ!!
最近、めっきり忘れられた小説家として、都筑道夫氏がいる。
推理小説家としての顔も有名だが、ショートショートの大家として、星新一氏と双璧だった。
- 作者: 都筑道夫,小森収
- 出版社/メーカー: フリースタイル
- 発売日: 2012/04/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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都筑氏の星氏との違いは、星氏があくまで子供向けというかエンターテイメントなのに対して都筑氏のはオトナというか人間のいやらしい本質的な部分を描いている点。
今回紹介する『都筑道夫のミステリイ指南』と、『黄色い部屋はいかに改装されたか』は推理小説の書き方などを論じたもの。
色々参考になる点は多いが、都筑氏が指摘しているのは、推理小説において本当に大事なのは、論理のアクロバットであって、トリックではないということ。
トリック偏重のあまり、話し自体が不自然になっているという。
論理自体がきっちりと組まれてあることが、本格推理小説の重要な点であって、それがしっかりしていれば、トリックは少々しょぼくても読ませるものはできるという。
これはたとえばこういう小説をさす。
ある人が小説家の家に小説を売り込みに来た。『完全犯罪のトリック』を考えたという。小説家は断る。主人公は『絶対にばれないのだが、どこでもことわれた』という。そして舞台は殺害された小説家の家に。そこを警察が捜査しており、主人公が聴取を受けている。「君、本当に何も知らないのか?」主「ええ、本当に。(うまくトリックが成功した)」
これなら、トリック自体は完全になくても、小説自体は成立する。
これはあくまで、例だが、論理で考えもしなかった結末を導き出して驚かせることが重要だという。
物書きなら読んでおくべき本。