実は、喫煙所がアイデアの根源だったのです。
IT技術の高まりで、情報のやり取りの速度が格段によくなったが、実は対面でのコミュニュケーションが一番大事だということには変わりがない。
『職場の人間科学』は、MITチームにより社員に取り付けられた調査用バッジの結果から、社員が創造性を発揮し生産性を高める条件を、人の動きや声の抑揚などによって捕らえようとした研究成果をまとめたものだ。
この本によると、人間は仮にメールでのやり取りでも直接知っている人や「席の近い人」でないと連絡せず、海外で数カ国にもわたって作業チームを作ると面通しがなかった場合トラブルになりやすかったりする結果を報告。
ウォーターサーバーなど直接的に仕事に関係のない場所での会話が多いほど、プライベートな悩みの相談などが行われ、ストレスの軽減や関係が強まるという。
また、ある人物に意見を求める人が多いことなどもその人が学歴などでは測れないキーマンであることを示しているため、人事査定などにも役立つという。
このコラムで多く取り上げている『年収は「住むところ」で決まる』でも書いているが、対面コミュニュケーションの回数が多いのは、創造性が求められる仕事においては特に重要。ダラダラ話をどうでもいい相手とする割合が多すぎると問題だが、適切な相手とのコミュニュケーションを生み出す環境や関係作りを後押しするプランを経営者側が立てることは重要になるだろう。
実際、職場以外のところで市民活動などをしている人は生産性が高く、優秀な人が多い。優秀だから余裕があるともいえるが、基本的にはそういう関係のないところから刺激を吸収していく部分が、本業にも生きてくることは間違いない。逆に本業のスキルや知識を使って無償で協力すれば、自分の社会的な位置づけ、やれることもはっきりする。
つまり、通信技術がいくら発達しても、いかに良質な人間関係をどれだけもてるかがその人間の生き方をよくする上で重要になることは変わりがない。IT技術の発達は皮肉なことに、リアルで強い人は理由があって強いことを証明してしまう結果をもたらしたと言える。
離職率を低くするためにも、この本で取り上げられているコールセンターの例のように、休憩時間を一斉に全員でとらせるなど、しっかりした対策が必要となる。
物理的な距離、対面関係の強さ、この辺りがポイント。
この本のよくないというか物足りないところは、日本の組織は対面コミュニュケーションを重視するというところをよい点としてあげているが、日本の企業は少し距離をとれるような配慮を逆にすべきである点については考察が浅いと思う。
同調圧力が強い日本企業では、これ以上対面コミュニュケーションを重視すると、精神的ストレスがたまり、自殺の原因となりかねない。
その辺りは余談になるが、中島義道氏の『非社交的社交性』(講談社現代新書)が少し参考になるかも。
職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」 (ハヤカワ・ノンフィクション)
- 作者: ベン・ウェイバー,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る