『かわいい!』は相手を排除する言葉
「かわいい!」
現代日本で耳慣れたこの言葉を発するたびに、あなたは相手を見下し、自分の支配できるようにしか相手をみていないのだ。
四方田犬彦著『「かわいい」論』(ちくま新書)は、そのような「かわいい」の政治性について言及した貴重な本。
気になったところを引用。
「われわれの消費社会を形成しているのは、ノスタルジア、スーヴニール、ミニアチュールという三位一体である。『かわいさ』とは、こうした三点を連結させ、その地政学に入りきれない美学的雑音を排除するために、社会が戦略的に用いることになる美学であると要約することはおそらく間違ってはいないだろう。(中略)
だが、この幸福さの映像に満ちた酸味行ったが、歴史という観念を犠牲にすることによって、はじめて達成されるものであることは、心に留めておく必要があるだろう。」(120、121)
このように鋭い指摘が随所にのっている。