集団的自衛権を考えるならコレを読め!
今、集団的自衛権についての議論が盛んだ。公明党の反対も押し切られようとする不陰気の中で、ごり押しで進められようとしている。
日本は第二次世界大戦で敗戦した後、憲法の下で戦争を放棄して戦力は持たないとした。その後、朝鮮戦争で警察予備隊ができ、保安隊、自衛隊へと進む。
もともと明らかに憲法違反の武力を持つ日本は、当然矛盾を孕む。鳩山一郎、岸信介など改憲勢力が出つつ、立ち消えになってきた。
湾岸戦争が転機となった。湾岸戦争では日本は憲法上派兵はできないとし、総額1兆3千億円の経済支援をしたが、クウェートをはじめ世界各国から感謝はされなかった。
これが外務省をはじめ日本政府のトラウマとなり、巨額の援助は少し巡洋艦を出すよりも効果が少ないという認識を与えることになった。
以前紹介したように、冷戦終結後はソ連という仮想敵国がなくなったことで、アメリカが軍を再編。同盟国にもコスト負担を求めるようになった。
湾岸戦争はその分岐点であった。
また、村山富市氏が55年体制を終了させたときに、社会党として自衛隊を合憲としたことも、これまで反対してきた対立軸を失うことになり、「リベラル」勢力が自衛隊の問題に対する力を失わせる契機にもなった。
『「改憲」の系譜』は共同通信社の連載をもとにして、書かれたもので、改憲問題を通信社らしく事実関係をよく書いているところがよかった。
とりわけ、石破茂と浜田靖一という新国防族が旗振り役となって制服組(軍人)の台頭が進められたこと、そして背広組(文官)も省益の拡大を狙っているため、必ずしも制服組の台頭が望ましくないわけではないこと。
また、経済界との関わりも書かれている。航空機産業や防衛産業のコアの技術は決して教えない米国との関係と産業界の挫折。さらに、経団連がトヨタの奥田章一郎会長と奥田碩会長のときに一気に改憲問題が経済界の課題として浮上したこと。
防衛産業では、共同開発ということにしておけば、資金を吸い取れる上研究開発を進められるメリットがある。特に日本は目の前に北朝鮮や中国という国との対立があり、具体的に話を持っていきやすい背景があるのでアメリカには好都合。
TPPもこの流れの中にあって、相手にコスト負担をさせ、「貯金箱」から資源を抜き取る動きを強めている。
この辺りがより深く知れたポイントだ。
それにしても、かつては軍隊とか核とか言うだけで内閣がふっとんだのに、えらい違いだ。