ジャーナリストよ。田端信太郎さんの本でメディア業界を学べ!
リクルートのR25を創刊した田端信太郎さんの『MEDIAMAKERS』を読んだ。
重要ポイントを紹介。
メディアの成立に必要なのは、発信者、受信者、コンテンツ
メディアには予言の自己実現能力がある。たとえば倒産記事を書いたら実態はそれほどでもなかったのに、実際に倒産した、のような。
メディアの権威性は受けての側を「ー新聞が言ってるから信じよう」という思考停止させてしまうこと
メディアというものはそこに情報が掲載されることによって、こういう層の読者がきっとこのように反応するだろうと実際に読者の行動が起きる前に、想像され、予想されることにこそ影響力の本質がある。だから読者像が明確だと、関係者に明確なイメージをもってもらいやすく、広告収入などに大きな影響がある。
読者を徹底的にリアルに具体的に想像すること。そしてテーマを見つけること。定量的に収入だけだとざっくりした話にしかならない。「生活者」としての読者。
ウェブ編集者の役割は、できるだけ多くのPVをできるだけ安い費用で稼ぎ、できる限り高い効率でマネタイズする。
稼げるメディアはそれだけ自由なメディア。ロマンは大事だが、そろばんを考えないとだめ。
ブランドを確立するためには、作り手に大して、得体の知れない尊敬を勝ち取ることが理想的。読者からみた「メディアの品質」とは作り手を尊敬できるかにかかっている。
マスゴミの上から目線といわれるが、それはなめられたら終わりの稼業なのでしかたない。
編集権の独立を軽んじていると、結果的にはメディアのブランド価値が下がる。
企業が持つオウンドメディアはちょうちん記事を書く傾向があまりにも強すぎると、誰も読まなくなる。
編集権の独立はジャーナリストや編集者が既得権やわがままを通すための盾ではない。読者を向いていること。
「配信技術はコンテンツに対して中立」というのは明らかな間違い。レコードの時代からCDの時代になるにつれて、サビを頭だしするなど音楽の構成自体も変わってきた。
昔はアルバムに実験曲をいれるなど、聴いてくれる前提があったが、それはいまのウェブでなくなっている。
ウェブメディアで大事なのは、内容ではなくて、技術や媒体が人間の経験形式を規定する。
メディアが変われば、提供するコンテンツも変化せざるをえない。
新しいメディアが出てくる度に、このメディア上では、ユーザーはどのような無言のメッセージを情報環境の構造から受け取っているのか。これは飲食店のいすが高ければ自然と回転数があがるのとおなじで、その仕組みそのものが人間の行動や経験を規定するという情報環境の中での一説。
自分たちの中核となる能力をいったん抽象化してみること。エルメスが馬具メーカーから「最高品質の旅行用革製品をつくること」を強みと再定義したように。
コミュニュケーションの主導権は、受け手に移行している。編集権など。
文章がうまいとか、写真がきれいだということよりも、当事者にちかい、現場に近いことの方がジャーナリズムにおいて有利に働くケースもある。
アメリカでは、今PVが稼げることを前提にしてライターに発注するディマンドメディアが登場しているが、これまでのジャーナリストの問題意識が先にあってというパターンとは逆。ただ、こういうやり方もむげに否定できない。勝てば官軍。
自己完結していた新聞社のビジネスが、各工程ごとに分割されようとしている。いったんばらばらになった各工程をどのように再構築していくのか注目。
メルマガは人間の「怠惰」を利用したもの。少人数で制作可能。電子メールさえできれば発行できる。お金を受け手は払うことで自分の存在や気持ちをしらせる。ツイッターなどで作者はそれに応じる。
電子書籍の本質は既存の出版社などが中抜きにされ、再構成されていくところ。
個人メディアはそのコンテンツではなくて、発行者の信頼。これについて株式会社の有限責任をはみ出てしまうケースもあるため、責任重大。
グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルの4つに、グーグル元CEOのシュミット氏がプラットフォームに集約されると発言。
この本はウェブによるジャーナリズムの変化をまとめたもの。ブランド構築などビジネス面からまとまった視点で論じた必読書。
佐々木紀彦氏の『5年後、メディアは稼げるか』と同じで、これからのメディア業界を語る上でこの2冊を読んでないとお話にならないだろう。この二人しか書いてないのが問題だが。
5年後、メディアは稼げるか―Monetize or Die ?
- 作者: 佐々木紀彦
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/07/22
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