福沢諭吉のダイナミズム。『文明論の概略』の過激さを体感せよ。
福沢諭吉は、いわずと知れた大物で、日本近代の創始者。
ただ、「一国の独立」を唱え『脱亜論』など朝鮮・中国への侵略を支持したとの批判もされる。
日本思想史家の子安宣邦氏の『福沢諭吉『文明論之概略』精読』は、福沢の代表的な著作の『文明論之概略』を思想史の視点から読み直した著作。
この本のすごいところは、丸山真男氏の『文明論之概略を読む』への批判で、丸山が無理にこの本に日本近代の萌芽を読み取ろうとしているとして、丸山が持つ近代化論を批判する。
さらに、当時の思想史的な状況に立った上で読解しており、たとえば当時の儒教や武士階級などにとらわれている頑迷な日本社会について非常な憤りを持っていると描く。
子安氏の著作は名著が多いが、過去の思想について、当時の状況に立った上で読み直しているため、どのように思想家が闘ったかのダイナミズムが味わえるのが非常にいいところ。