アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

移動は特権階級にとっては「投資」、貧困層にとっては「職探し」

プロブロガーのイケダハヤト氏が高知県に移住することを発表した。

http://www.ikedahayato.com/20140601/6301963.html

 

実際、意欲的な取り組みでもあり、関西の地味な県に住んでいる身にとっては、今後どうなるのか興味深い挑戦だ。

 

いい機会だから、今回は「移住」と「定住」についてまとめたいと思う。

 

これまで取り上げた本の中に、移動や定住についての考察が加えられたものをいくつかとりあげた。『年収は「住むところ」で決まる』などはその典型だろう。

 

20世紀の末から通信技術がコンピューターによって普及した結果、住む場所を選ばなくてもいい職業が脚光を浴びることになった。もしくはその技術を利用して成り上がる人間が出てきた。

 

実際、金融やIT、(英語圏は特に)ジャーナリストなどが恩恵を受けている。

 

客家』(講談社現代新書)に詳しいが、中国で鄧小平をはじめ客家が成り上がったのも、毛沢東が国民党軍との国共内戦のときに、山間部にある客家の拠点を利用して転戦したからであって、さらに現代では彼らの血のネットワークを通じて世界中から金融で情報を集め利益を上げているからだ。これはユダヤ人とも通じることだが、「ネットワーク」と「場所を問わないこと」を特徴として持つ民族なり集団が利益を得る時代だということ。それまでは農耕など土地を支配する民族なり国家なりが強かったわけだから。実際ユダヤ人も「金貸し」だとか白眼視されていたのは、シェークスピアの『ヴェニスの商人』あたりを読めばわかるだろう。

 

今は客家ユダヤ人という集団について話したが、何も民族にこれは限らない。アメリカだって一流大学の同窓生同士のネットワークもあるし、起業家のネットワークだってあるだろう。昔ながらの学歴というネットワークもあるが、様々な分野の「実力」に応じた多様化が進んだといえるのかもしれない。

 

移住がポイントだと書いたが、私がテーマとして取り上げた海外就職にしても、移住には変わりない。

 

私は自分が海外就職で失敗した身だから、移住というのが投資であるということは実感している。つまり、住むということは仕事とセットであって、その仕事を得るためにあらかじめ場所に投資するのだ。「いい仕事」があるから移住する。魅力がある土地は限られるし、今後もひょっとしたら思わぬところから生まれる可能性もある。こればかりはわからないのである。『住むところ』の書くように、あるスター研究者が移住すれば、それが引き金になってその大学のレベルがあがり、有力な研究者も連鎖的に来るということがありえる一方、産業基盤自体が脆弱だと後から何をしてもムダだということもある。神のみぞ知る、である。

 

ただ、いずれにしろ注目すべきなのは、『住むところ』で書かれているように、エリート層は固まるということだ。なぜって単純に楽だし生活しやすいからだ。当たり前だが、レベルの低い人間といっしょにいると仕事の速度は落ちるし、無駄なストレスを抱える。それにクリエイティブな人間は、頭の悪い人間から多くの場合嫌われる。

 

そういうことを考えると、教育などの文化資本も「持ち運べる」わけで、教育にどれだけ時間とカネをかけられるかが勝負になる時代というのは今後も続きそうだ。

 

海外就職について言うと、現地で得られる賃金が日本基準では圧倒的に低いことも投資のリターンが日本で働いた時と差がでないように短期で切り上げることをお勧めする理由がそこにはある。現地採用で新たな発見や自国の社会を相対化するなどの経験を獲得する「可能性」がある期間が2~3年なのであり、それ以上経っても何の進歩もない人はそもそも海外で住む素質がない。よほど魅力的な人にあえれば別だが、基本的にどこの国のエリートも本国で出世するのが普通であって、途上国や辺境にいる人間自体に大した人は例外中の例外を除いて、いない。変にすねた思想の持ち主やヒッピーならいるかもしれないが、、、。

 

 クリエイティブ層が互いの分野でアマチュア的に話したがるのは、刺激がほしいから。つまり、自分の専門以外の人と話すことで、いい意味で相互作用を及ぼすこと、そしてそれによって新しい成果をあげられるからなのだ。

 

私は売文業という性格上、よく「専門は何ですか?」と聞かれるのだが、「専門」は人間をバカにする。これはいわゆる「専門バカ」という意味ではなくて、単純にその道のプロになった瞬間に、意識が閉じる。つまり、自分を外から見る視点がなくなる。それが問題なのだ。

  

アップル創業者のスティーブ・ジョブズも『1995 失われたインタビュー』という映画の中で、アップルに詩とかコンピューター以外の要素を持ち込んだのがよかったというような発言をしているのがその証拠だろう。

 

投資には当然、資本が必要だから、それを持つ人間は選択の幅が広がるが、層でない人間は逆にさえない土地に締め付けられることになる。

 

 日本は東京に何でもかんでも固めすぎているから、東京に人が一極集中するのだろう。

 

イケダハヤト氏の挑戦は一つの試金石になるので、動向を応援しつつ見守りたい。

 

年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学

 

 

 

ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995

ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995

 

 

 

客家 (講談社現代新書)

客家 (講談社現代新書)