新聞が奇人・変人大会になったワケ
新聞の特に人権問題で社会的弱者などの描き方がどうもおかしいと思った方は少なくないだろう。
奇人・変人を集めた「エンターテイメント化」しているのはうすうすみんなが感じているのではないか?あまり悲惨だとか苦しいだとか極端な事例を挙げすぎると「ああ、またか」という風にマンネリ化させる原因になる。
『「当事者」の時代』(光文社新書)は、元毎日新聞記者でフリージャーナリストの佐々木俊尚氏による、メディアの内情、メカニズムが実体験をもって描かれた著作だ。
著者は元全国紙記者として、「メディアが権力にコントロールされている」という世間に広まる根拠のない風潮に、実体験に基づいて構造的に分析する。
まず、「夜回り共同体」という概念が警察と記者の間にあるというのだ。これは、記者会見など公式の場では、突っ込んだ話をせずに、警察関係者の自宅に夜に取材をかける夜回りの場で肝心な話を聞く「夜回り」が、新聞社の取材のスタイルとして定着しているために、発生する「持ちつ持たれつ」の関係が生まれているという。
記者の特ダネプレッシャーと、警察の情報をコントロールしたい意図が絡みあって成り立っているという。
そして、次に、エンターテイメント化する報道に関してだが、55年体制の中での安定で、自分たちを「普通」だと思いたいという大衆の欲望が作り出した背景も述べている。
さらに、記者の「市民」が弱くて無垢なもの、「プロ市民」ではない人々に向けられている心理など説得力があっておもしろい。
このようなメディアの現状にあって、「当事者」として語ることが解決策だと提示する。
よく勉強されてて、メディア論の入門書としていい本。