ラーメンはアメリカから生まれた
国民食となったラーメンだが、実は敗戦後の日本にアメリカが国内であまった小麦の市場になったという背景があったことを知っている人間はあまりいないだろう。
『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)は、アメリカとの関係、国内では田中角栄の日本列島改造計画との関係でラーメンを論じている。
戦前に横須賀の居留地から入ってきたラーメンは、戦後、アメリカから食糧援助という名目で小麦が日本に輸入されてきたため、小麦で作った麺が普及することになった。
アメリカは第二次世界大戦中に小麦を増産していたため、終戦後に増産であまった小麦の向け先に困っていた。パン食キャンペーン(米へのマイナスイメージを与えた)を進めたのもこの事情からである。
日清食品の創業者により、ラーメンは工業化される。
ご当地ラーメンも観光資源として開発されたもので、もとから地方の特色があったわけではない。
日本とアメリカの工業に対する考え方の違い、規格品大量生産と日本の一品主義。
そのほか、浅間山荘事件では、機動隊と立てこもった連合赤軍が同じカップヌードルを食べ、大きな宣伝効果を及ぼした。
昔は白衣の作業着だったが、黒い作務衣になり「和」が強調されるようになったことはプチ日本への回帰をあらわしている。
アメリカの大量生産の背景が、南北戦争で諸国に先駆けて総力戦を経験していたことがある。フォードシステムが生活水準を押し上げた。
このこと以外にも、ラーメン二郎についての言及など、鋭い指摘が入っていて、かなりお買い得な新書。