三人称不在の国
先日に続き、森有正著『いかに生きるか』(講談社現代新書)を取り上げる。
「経験」については以前話したから、今回は日本語、日本社会の人間関係の基本となる概念について。
森氏によると、日本語では必ず相手との権力関係の中での具体的な二人称にしかならず、客観的に人柄や能力をみる三人称が成り立たないとする。この結果、自分が自分として生きられないという一人称不在の状況が起きる。
これが日本を第二次世界大戦に陥れた原因であるにも関わらず、1976年当時でもすでに日本はすで教訓を失っている。そのため、ここをしっかり反省すべきであって、
教条主義的にキリスト教を学ぶのではなくて、神の前に平等で内面の自由が尊重される三人称の世界という本質をつかんでほしい、とする。
文章は平易だが、日本社会への本質的な洞察が講演形式で論じられており、おススメ。