ヨーロッパのやりかた
先日取り上げた 『ネオコンの論理』(光文社)は軍事力というハードパワーの存在を軸に世界秩序におけるアメリカの重要性をのべ、唯一の超大国となったアメリカが他に頼らなくてもやっていけること世界秩序の認識として提起した。その中で核の傘に守られてきて軍事にカネをかねなくてもよかったヨーロッパとの距離感も確認した。
そのロバート・ケーガン氏の著作に対抗したのが、イギリス・ブレア時代の外交政策の立案に大きく関わった、マーク・レナード氏の『アンチ・ネオコンの論理』だ。
この本では、軍事力というハードパワーとは違ったパワー概念を提示する。
具体的には経済、外交による関係構築、軍備状況などをお互いにオープンにする相互監視でお互いに勢力均衡で軍事費がかさばる事態を回避するなどの政策方針をさす。
マーク氏によると、ヨーロッパはアメリカのように一人の大統領の下に集まるという方式ではなく、むしろ明確な方針を立てすぎずに具体的な問題に一つずつ対処していくことをとおして、異なる意見を包含しながらネットワークを徐々に拡大していくことが強みだという。
ヨーロッパは勢力均衡政策が二つの大戦の引き金になり、この方策をとることにヨーロッパ諸国が反対しているため、いくらEU内部でごたごたが起きてもEUが崩壊するようなことにはならないという。
軍事介入については、アメリカのようにただ敵をつぶしてすぐに撤退するというやり方は無意味で、独立させるように破壊しつくさずに外交を中心にやることが重要だという。その点の認識の低さが、イラクでのアメリカの失敗を大きくした。
軍事力については、陸軍兵力しかもたず、世界展開できるような体制ではないため、再編して、EU軍のような形で軍事力を持つのがいい、と。
マーク氏がいうには、国民国家という統治体制はそれ以前にはなかった画期的なシステムだが今後は地域統合が有効になるだろう、と。
アンチ・ネオコンの論理―ヨーロッパ発、ポスト・アメリカの世界秩序
- 作者: マークレナード,Mark Leonard,山本元
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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