アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

噛みつかれてナンボ

エライとは何だろう?地位が高いこと?社会に何らかの実績を残したこと?私から言わせればどちらも違う。噛みつかれることだ。それもまっとうな根拠を付けられた上で。

竹中労著『エライ人を斬る』(三一書房、1971年)は各界のエライ人に根こそぎ噛みつきまくったエライ人図鑑だ。往年の名ルポライター竹中労の名を知る人はもうほとんどいないけれど、この本に掲載されているのは黒川紀章(敬称略、以下同じ)、黒沢明佐藤寛子池田大作などの今でも著名な人々ばかりだ。「各界トップスターを総撫斬りにする」とサブタイトルがついている通り、政界もぬかりはなく、中曽根康弘なども彼の標的となっている。

個人的に気に入ったのは、日本共産党不破哲三を評した「ヘアトニック・ラブで革命ができるか」(100P)だ。共産党の議会革命主義を批判する文脈の中で、佐藤栄作を始め自民党議員に外見の評判がいいことを皮肉って、「不破議員が‘国会のルール’を守って、紳士的な態度であるということ。背広にネクタイ、髪をきちんと分けてクシの目を通し、ヘアトニックの芳香が漂ってくる。ははァ、それでご婦人にモテるってわけだ、ヘアトニック・ラブ!冗談はさておき、‘敵’にほめられるってことはダ、ナメられちょる証拠なのである」(107P)と断じたことには、いささかのセンスの古さや同党の本当にエライ人宮本顕治批判も相まって、快哉を叫んでしまった。

固有名詞を出して攻撃するのは確かな根拠と勇気が必要だ。ただの誹謗中傷とならないよう相当のバランス感覚も要求される。報道の権威が失墜する中だからこそ、「私にとって文章をマスコミに発表する作業とは、可能な限りの領域で『活字の暴力を行使すること』にほかならない」(P21)は彼の宣戦布告であるとともに、ジャーナリズムの王道として輝きを放つのダ! 

 

 

エライ人を斬る (1971年)

エライ人を斬る (1971年)