アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

苦い思い出、、、、

 あれは、まだ暖かさが残る10月の後半だった。クラブのイベントで知り合った女の子と食事に行くことになって、渋谷からバスにのった。少し派手めではあったが、唇が厚めの、可愛い子だった。私は普段、クラブにはいかないし、たまたま誘われて遊びに行った際、知り合ったのであった。

 期待に胸を膨らませながら、指定されたバス停に行くと、彼女が待っていた。チェック柄のポンチョをはおっていた。マイブームなんだそうだ。外にいると寒いので、どこか食事のできるところに行くことにした。

 イタリア料理屋に行くことになり、ワインを注文した。食事はパスタにし、たらこスパゲッティとアラビアータを頼むことにした。しばらく楽しい会話が続いた。そうこうしているうちに、彼女が今年の夏に友達500人とタイに行った話が始まった。今、思えば500人という数字が怪しかったのだが、この時点では知る由もない。

 話は進み、彼女は美容グッズのセールストークを始めた。会員制のクラブらしく、勧誘すればするだけ自分に利益が還元されるらしい。渋谷の支部長は年収3000万なんだそうな。

 「思いっきりねずみ講やんけ!」と思いながら、話を聞いていると、面白いことに気付いた。彼女には罪悪感が一切なく、「自分は本当にいいことをしている」という意識しかないようだった。「自分は絶対に成功する!」と断言していた。目は、乾いてはいたが、輝いていた。

 「裏切られた、、、。仕事も早めに切り上げたのになんでやねん」と裏切られた思いを持つ反面、羨ましくも思えた。ここまで自分のやることに自信を持てるとは、、、。宗教心とは現代日本では「凝り固まったヤバイ人が持つもの」とされているし、本当にそうなのだけれど、改めてみると感心した。

 私は特定の宗教団体には所属していないし、組織という組織が嫌いなので今後する気もないけれど、昔からこういう勧誘を受けるのが多かった。そういう手合いには「俺が神だ!」といって丁重にお断り願っていたけれども。どうやら私は胡散臭い人間を呼び寄せる雰囲気を出しているらしい。

 久しぶりのデートで、まさかクラブで知り合った女の子で(偏見だということは重々わかっていますが、田舎者の私めにはエロティックで世俗的な臭いがしたのです)、こんな展開を迎えるとは思っていなかったけれど、いい思い出にはなりました。チクショウめえ。