実は年収アップの秘訣は住むところだった
エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる』は、恐ろしい本だ。
だって、がんばって勉強して学歴を高めても、高卒のブルーカラーに、「住んでいる場所」によって収入が低くなるのだから。
この本はアメリカのイノベーション産業がアメリカの地域にどのような影響を及ぼしたのかを書いている。
製造業が先進国でかつての勢いを失った今、知識集約産業の重要性が日に日に増している。IT,金融サービス、ライフサイエンスなど多岐に及ぶ。それらのイノベーション産業によって経済成長が支えられているのだが、その成長によって国内の地域間の格差が開いているという。
もちろん、イノベーション産業が雇用を多く生み出しているのは間違いないのだが、ある地域では高給を受け取る層が地域全体の所得を押し上げる一方、そうでない地域はますます衰退しているという。
地域全体の影響が派生するのは、確かに高給とりは一部かもしれないが、彼らがサービス業などの消費する資金が全体の賃金を押し上げ、街に成長をもたらす。だから、仮に大卒で学歴が高くても、さえない街に住んでいると、イケテル街のブルーワーカーよりも少なくとも額面上は負けているのだ。
著者 の指摘している点で重要なのは、イノベーション産業がある地域に集中するのは、①労働市場の厚み、②専門的サービスの充実、③知識の伝播を理由としてあげている。
実はこのうち最も重要なのは③の知識の伝播。これは、イノベーションはアイデア勝負であるために教育水準が分野を問わず高い層がいればいるほどいいため、刺激を求めてある場所に集中する傾向があるというのだ。その過程で仮に同じ学歴水準でも住む街によって環境や働きやすさが変わるなど人生全体に影響を及ぼすことになる。
確かに、周囲に頭がよいヒトがいればいるほど仕事は効率的になる。
著者も指摘しているように、教育レベルの高い移民の流入は、
教育レベルの高い人々というよりは、むしろ教育レベルの低い人々
に恩恵を与えるのだ。結局、問題はどれだけ移民を受け入れるかということではなく、
どのような移民を受け入れるか、ということだとも言っている。
著者はこれにからめて日本のソフトウェア開発のレベルが低下したのは
基本的には人材の層が薄くなったこと、アメリカが常に高い金を出して
教育レベルの高い移民を国内に入れ続けたのとは対照的だ。
ただ、アメリカは教育レベルが高い層は相変わらずレベルが高いが、
高校中退者も増加しているらしく、この辺で地盤沈下がおきているという。
やはり21世紀は教育にどれだけカネをかけられるか。人的資本の時代といえそうだ。
日本の場合、東京に特に知識産業は集中していることもあり、なかなかアメリカのように街ごとに特色があるのは難しいが、参考になる。
年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学
- 作者: エンリコ・モレッティ,安田洋祐(解説),池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2014/04/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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