アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

ジジババの土産話はもう沢山〜日本論を読み直す①〜

いちおう、日本は先進国ということになっているらしい。

 時間に正確な電車。約束を守る人々。世界トップクラスの物質的な繁栄。確かにそういう条件は備えているようにみえる。実際、強国であることは間違いない。

 私は今年で28歳になったが、基本的に日本社会が嫌いである。なぜかというと、汗臭くてダサいから。つまり、自分の向き不向きから離れたところでひたすらズレたことをしたりさせたりしているからだ。

 こういうことを書くと善良な日本人の皆様からは反感を買うだろう。「日本人は世界的に見ても優秀だ!」「日本ほど治安がいい国などない!」「日本を馬鹿にするな!」「日本がいやなら出て行け!」と。

 そう。嫌いなら出て行けばいい。私自身も少し前まではそう思っていた。実際、海外で働いてみたいのだが、そこでさらに濃厚な「日本ムラ」の被害を受け、逃げ帰ってきたのだ。そして悟った。日本人ほど「逃げる」ことが難しい集団もないのだ、と。「人間らしい幸福を求める」という思いの理解者を見つけるのがこれほど難しい集団もいないのだ、と。

 以前、ある官僚との雑談の中で彼がこう言ったのを覚えている。「今や、日本人ほど海外のどこに国にも多くいる『国際的な』国民はないんですよ」。私はこの言葉に反発を覚えずにはいられなかった。そりゃ、数は多いかもしれない。日本の企業活動が活発なのだから当たり前だろう。問題はその生活の中身である。「日本人ばっかりでゴルフばっかり行ってる駐在員と昼から高級ランチ食って下らんブログ書いてる連れの集団のどこが『国際的』なんだよ」と今でも全くそう思う。

 ただ、逆に自分が現地の社会の人々と交わる中で、「やはり自分は日本人として生まれ育ってきたんだな」と思わざるをえなかった。つまり、相手の社会について知ろうとすればするほど、自分とそれを創り上げた社会について考えざるを得なくなったのだ。

 誤解しないでほしいのだが、私は日の丸だとか、そういうステレオタイプの「愛国心」なんぞに目覚めたのではない。むしろそういったものは日本社会に対する目線を覆い隠すだけのものでしかない。こういう「思考停止」についてはまた後で詳しく書きたいと思う。

 

 この文章を私は日本社会について論じられた「日本論」を下敷きにして、日本人とは何か、を問い直すことに主眼を置いている。

 このテーマは以前から多くの「国際人」とされる日本人によって論じられてきたにも関わらず、私からすればそのほとんどがズレているとしか思えなかった。その理由は簡単で、仮に英訳された場合でも論理性がきちんと保たれているような、外部からの視点を前提にした認識がまるでなかったからだ。

 そういうゴミ本を読むたびに日本人というのは、結局、内輪向きの話しかできない集団なのだと思わざるを得なかった。物理的に国の外に出ても、認識がこれでは行った意味など何もない。彼ら・彼女らの生活の質がそのまま反映されているのだ。つまり、多くの日本人のインテリにとって海外の国々、特に強国のイギリスやフランス、アメリカを論じるということは、女子大生がフランスに卒業旅行に行くようなもので、「行ってきた」という事実をムラの中で自慢したいだけで、それ以上のものではなかった。つまり、どんな体裁をとっていてもステレオタイプのお土産話だったのである。

 また、海外でいる人間も奇妙な人間が多かった。やたらと自己主張が強い人間、明らかに日本社会からの敗残者、現地の人間に異常に肩入れする人間、逆に猛烈に差別する人間。共通しているのは、明らかに日本から悪い意味で浮いているということ。

 こういう「同化」か「排斥」かの社会で生まれた人間が日本語で何か日本について語ろうとすることは、当然自己批判を伴う。また、社会の矛盾に気づいているだけに、普通の日本人には分からないストレスも抱えることになる。はっきりいえばシンドイことである。

 ただ、結局のところ、こういうシンドさを受け止めて論を紡いでいくことこそが、他者理解なのではないのだろうか。それを怠ってきたのが、日本の特にインテリなのではないか。

 他者からの視点を基に、自分を壊していく。これはたまらなくヒリヒリする緊張感を伴うことだ。もし、人間がモノを考える事に意味があるとしたら、こいう緊張感を味わうことの中にしかない。そしてその緊張感に耐えられるのはまぎれもない「強さ」なのだ。

 そういう「強さ」を持てるような本を紹介していきたいと思う。