アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

小説⑦〜初めての会議〜罵り合いは突然に

 私とTはオフィスに戻り、仕事にかかった。しばらく仕事をした後、午後7時に業務報告会が始まった。

 開口一番、業務主任で細身で2メートル近い長身のK君がこういった。

 K「あのー、新しく入った人の紹介を昨日いきなり受けたんですけど。何で事前に紹介してくれないんですか?」

 私は驚いた。事前説明がない、だと。。。。。。

 KT部長って何でもそうなんですけど、なんでいっつも突然前触れもなしに決めちゃうんですか。いきなり知らない人が来たらびっくりしますよね?普通」

 

 入社初日、いきなり穏やかではない。

 

 T「俺だって色々忙しいわけー。まあ、懇親会は開くから、そのときでいいかなと思って。」

 K「これからいっしょに働く仲間を迎え入れようってのに、それはないんじゃないですか」

 他の社員の眼も鋭くなる。明らかに吊るし上げの雰囲気だ。えらいところにはいっちゃったもんだ。何より私がむかつく。そんな扱いかよ。

 

 K「まあ、いいです。(私の方を見て)これからよろしくね。さて、今日の業務報告なんですが、クレームが三件ありました。これ全部T部長の案件ですよね?」

 T「何でも俺のせいにしないでよ。それKくんとかみんなが連絡きちんとくれないから納期が遅れちゃったんじゃん」

 K「いや、俺らはきちんとしましたよ。大体、あの日あなたがこのクソ忙しいのに飲みにいってたからでしょ?前も言いませんでしたっけ?納期直前はトラブル対応があるから行かないでくれって」

 T「おれも忙しいわけー。そういう風に飲みにいって、先代からの関係守ってるからこの会社がインドネシアの邦人社会の皆さんに受け入れられてるんじゃん」

 K「いや、部長としての責任とそれは両立できるでしょ」

 Kくんが憤るたび、長い手が遮断機のように宙に向かって振り下ろされる。威圧感はさながらヒットラーの演説のようだ。

 明らかに自分より頭のいいKに反論をまともにできず、だまりこみ最後は「俺が決める」で押し切ろうとするT

 こういうやり取りが延々と続く。もちろんK以外の社員もガンガン批判する。普通、日本の会社では上司は偉いものとされていて、面と向かって痛罵することはできない。こういうのを「自由な社風」というかは別だが。

 いきなりの洗礼にとまどったが、会議自体は終わり、仕事もなんとか終える事ができた。

 

 K「今日、大丈夫?飲みにいこうか」

 

長い夜が始まった。