アジアで就職したらブラック企業だった~南の島は蟹工船~

東南アジアでブラック企業に就職し、ストレスから入院し逃げ帰ってきた人間のブログ。        注・このブログはモデルとなった現地企業で働く人々などへの取材をもとにしたフィクションです。ただ、実際に起きている「空気感」は本物です。その辺りを味わっていただければと思います。

デンジャー!アジア就職!

 「あこがれのアジア就職、楽しみだわ。海もきれいみたいだし」、「つまらない日本にいてもしかたないから出て行くぜ。世界が俺を待っている!」、「海外で現地にいれば地元の人々とも関われてエキゾチックだぜ」———。

 この文章を読んでいる方はこれから海外で就職をしようとしている、あるいはすでにどこかの企業や団体から内定をもらっている方だろうから、上のような期待をお持ちかもしれない。

 そんなあなたに私が多くの人々にとっての海外就職とは

「日本人同士の食い合い」

であり、近い将来、特に東南アジアは老人にとっては「物価が高くなり年金も減額され、

老人ホームにも入れなかった人が比較的強い日本円をもって移住する場所」、若者にとっては「能力がなくて日本にいられなくなった人々が最終的にしかたなく働く吹きだまり」

となることを言わねばならないのは残念なことだ。

 

 もし、あなたが「せっかくの俺の『夢』に水を差すようなマネしやがって!」、「ひどい!そんなこと私の海外就職本には何一つ書いてないわよ!新手の詐欺師め!」と思うようなロマンチストなら、ぜひここで読むのをおやめいただきたい。そういう人はちまたに溢れ出る、デコレーションケーキのようにあまーくウソと宣伝文句で固められた詐欺師の言葉を読んでいただればいいのである。

 この文章で私は、現在の海外就職は、よほどの幸運な例外を除いて、日本が第二次世界大戦前で敗戦する前にあった満蒙開拓団やブラジル移民などと同じ実質的な「棄民」を生み出すとの認識のもと、

 

「日本国内で企業に新卒入社し最低2年以上働いた後、海外で1〜3年ほどの短い期間働きたい」

という人を読み手として想定している。

 

 なぜこのような層を読者に想定したかというと、基本的に私は「人材は育たない。歳をとると差が開くだけ」と思っており、日本で「会社人」を最低2年以上経験もやり抜く素質もない人に対して何を言ってもダメだと思うから。さらに、基本的に日本人は社会のメーンストリームから逸脱した人をあくまで嫌って汚れ仕事をさせ、国際感覚から著しくズレているという「よそ者に冷たい」本質は、今後数十年間は変わらないから。

 私はしっかりと日本でも通用する素質を持った人に

「いかに日本がおかしいか、逆に日本のすごいところはどこか」

を観光とは違った立場でダラダラと無計画に住み続けることなく、しっかりと体に染み付けてもらうだけにとどめてほしい。そしてどこかの国で体に染み付いた経験があなたを「日本ってこんな国」と思わせてくれて期待も失望も過剰に高まるのを防ぎラクにしてくれると思うからだ。そしてそれが本当に日本が危機に陥ったときに自分を守ってくれるに違いない。

 海外就職を今の時期に考えている、これを読んでくれているあなたは、職業に対する意識が高くて国際的にはまともな感覚である(少なくともそういう素質はある)人が多いと思う。私はそういう人たちに、私が経験した失敗や、海外で働いてよかったと思うことをスマートで賢い海外就職をする材料にしていただきたい。これはおかしい、これはよかった、色々ご意見、ご批判はあるかと思いますが、最後までお付き合いいただければと思います。